ガウディーズ「PLEASE DO NOT SPIT ON THE ガウディーズ」

自分がレコーディングとmixさせてもらった音源も入っていて(2曲目「哲学の先生」)やや贔屓目もあるかもしれないが、色々自分も変化の時期を迎えつつあるなぁと思い、堂々とこの作品でblog再開としましょう。


ガウディーズの正式な初音源となる「PLEASE DO NOT SPIT ON THE ガウディーズ」は、DLという形式で無料配信することにしたようである。

「mp3配信」といって、今更その斬新さを唄うつもりも到底ないだろうと思う。今やメジャーでも「無料配信」を武器にマーケチングを広げようと必死こいている。そういう意味ではメジャーもインディーも大変なのね(と、最近はよく思う)

ガウディーズの世代にとって「無料配信」はチャレンジでも広告でもなく、単純な「選択」なのだろうと思う。そこには数十年間築き上げた音楽業界の歴史はもはや無く、各アーティストが音源というコンテンツにどう向き合うか、という各人の意思表示の媒体になっているのだと思う。


さて、7曲入りのこの作品で既出の楽曲もあったのだが一気に聴くとそれこそmyspaceやデモでポツポツと聴けていた曲が異なる印象となって一つのアーティスト像のようなものが立ち表れるので、アルバムというのは単に音源の寄せ集めではないことを思い直した。


ガウディーズの事を評する時に「曲が良い」と皆口々に言うが、それしかないのかよ、と言いたくなる一方、否、本当に「曲が良い」と言いようがない部分を拭えないバンドだと思う。逆に言うと、日本人の感覚として持つ「良い曲」が作れるロックバンドが相対的に減ってきているという逆説でもあるかもしれない。

良い曲を作る、それ以外に何か必要あるのか?

実はそれ以外にも色々と必要らしいということがここ数年の研究で判明した。どうやら音楽をやる時に、良い曲を作るだけでは足りないらしいよ。あくまでも他者を想定した場合だけど。


映画『アンヴィル』でもエンデュングでリップスは「いい曲を書くだけじゃだめだ。大事なのは考え方だ。何に満足して、何に妥協するか、人生を楽しんでるか。」って言ってたしね。50近いおっさんが30年かけてやっと分かったらしいから、この問題は相当根深い。


先日渋谷屋根裏で行われた自主企画では、彼らの演奏は最高とは言い難かったかもしれない。というか、いつも以上にモッサリしていたような気もする。そんな気もしてand young...加納さんとその味わいに盛り上がっていたのだが。

演奏が曲のクオリティーに追いついていない、という表現が適切かどうか分からないが、このCDを聴いても同様の印象、つまりライブよりCDの方が曲が伝わるということ。ライブ至上主義の昨今ではかなり貴重なロックバンドだと言う事もできる。

僕は勿論、そんなガウディーズは素敵なバンドだと思うのだが、「ライブよりCDの方が良い」と言われて喜ぶ人はいないと思うので、その辺りが今後のガウディーズをどこに導くのか、気になるところである。

vocal&guiterの河野君は日本の情けないロックスター像なんてぶら下げるつもりもないだろうから、ガウディーズがここからどう表現を突き詰めていくのか、とっても身近で見れる状態なので個人的に楽しもうと思う。